2025年10月26日、東京流通センター第一展示場/第二展示場にて開催された音系メディア即売会「M3」に、箱舟壱座としてサークル参加し、ブース出展しました。
これまで個人的に一般参加は何度かしていたのですが、ブース出展は初となります(意外という声もちらほら)。頒布したのはボイスドラマオムニバス『箱舟コメディBOX Vol.1』のダウンロードカードおよび箱舟壱座オリジナル缶バッチです。
『箱舟コメディBOX Vol.1』に関しては、現在Boothにて電子版がお求めいただけます。
https://hakobuneichiza.booth.pm/items/7585564
この記事では、M3にブース出展までのこと、当日および当日を終えて感じたことについて、ボイスドラマ制作サークルの視点で書いていきます。
M3とは?
M3(Multi Media-Mix Market)は音系メディアを取り扱う即売会です。音楽、音声ドラマといった「音系作品に特化したコミケ」と考えて差し支えないと思います。音系作品はコミケでも頒布が可能なのですが、やはり同人誌が主役のイベントであるため、音系作品のサークルは埋もれがちだと言われています(よっぽどの知名度があれば話は別ですが)。そこから独立するような形で有志が集い、開催されているのがM3というわけです。ボイスドラマ制作者をしていると情報を目にする機会が多いイベントです。
箱舟壱座は旗揚げ以来、主にYouTubeでの作品公開をしてきました。昨年夏はラジドリコロシアムという賞金制大会にも出場していましたが、それを除けば箱舟壱座作品に価格がつくのはこれが初となります。
出展を決めた理由
箱舟壱座とその作品に対して、どれくらいの人にどの程度の価値を感じていただけるかを測りたかったのが大きな理由です。
ボイスドラマ制作には、金銭的・時間的コストの両方がそれなりに掛かります。
制作に必要なソフトウェアおよびサービスは有償のものを使用していますし、関わってくださった出演者・スタッフに対しては、ささやかな金額ではありますが報酬をお渡ししています。
時間のことで言えば、企画立案から始まり、脚本制作をしてからキャスト募集、キャスト決定後はリモートでの稽古演出から収録、音声編集からXでの広報まで。現在の箱舟壱座の体制では、キャスト以外のほとんどのタスクをNoah Rev一人が担当しています。
ここまでやるのは「好きなことだから」……と言ってしまえばそれまでなのですが、私も年齢が上がるにつれてライフステージが変わってきており、今後も活動を持続可能にするためには、利益を出すことは難しくても、制作費ぐらいは回収できることを目指して作品を出していくのが理想だと考えました。
準備からM3当日まで
頒布作品である『箱舟コメディBOX Vol.1』については、後日別の記事にてまとめたいと思いますのでここでは割愛します。
作品制作以外の部分、すなわち即売会に向けた準備ですが、先駆者の情報も参考にしつつ、初めて尽くしで手探り状態の中で行いました。
まずはポスターやブースクロス、スタッフ用のオリジナルブルゾン等、必要な販促物の準備。せっかくのブース出展なので、これまでに制作したイラストや知人のデザイナーが制作してくれた箱舟壱座ロゴをふんだんに使い、オフィシャル感を出すことにこだわりました。また、当日はサークル代表以外にも最低一人はスタッフが居た方が良い(所謂「売り子」)という話を活動仲間から耳にしていたので、箱舟壱座作品の常連である穂月こはる様に依頼いたしました。当日はNoah Revのアイコン(?)にもなっているフクロウの大きなぬいぐるみをプレゼントしてくれたので、ブースに置くことにしました。
念入りに準備をした甲斐もあり、当日とにかく目立つという目的に関しては達成できたように思います。
当日のこと
M3の開場時間は10:30ですが、サークル参加者は9:00から前もって入場し、設営を行うことができます。当日の朝、山手線が遅延するというトラブルはありましたが、結果的に9:00より少し遅れて会場入りし、余裕をもって開場に臨むことができました。
開場時間から1時間は、ほとんど壁サー(壁際に設置される人気サークルのブース)目当ての方が来場しており、頒布作品を求めて並ぶ長蛇の列が我々のブースの前まで来ていました。箱舟壱座ブースも午前中の来場はほぼ無く、お昼前あたりから来場者が増え始めました。出演者・関係者はもちろんのこと、箱舟壱座に興味を持ってくださっている活動者さん、M3をきっかけに知ってくださったご新規さん、以前参加したThe Creatorsで知り合った方や、関西からわざわざお越しくださった方など、たくさんの方とブースでお話しすることができ、作品を手に取っていただけました。
当日頒布できた『箱舟コメディBOX Vol.1』は合計で18部でした。初参加のサークルは頒布物が全く売れないということはザラにあるそうなので、初めてにしては上々だと思っています。……が、ボイスドラマ制作者として考えると、課題も多く残りました。
サークル参加を終えて感じたことと今後の課題
総じて、ボイスドラマに価値を感じていただくのはとても難しいと感じました。
あくまで主観的な主張にはなりますが、現状M3においてボイスドラマはマイナージャンルに位置しています。
Xでの戦利品報告を見ていると、音楽作品のものに関してのpostが大半を占めており、事前から目当てにしていたサークル以外の新規開拓に熱心な一般参加者も散見されます。一方、ボイスドラマはそうではありません。ボイスドラマ制作に関わる人間の中で盛り上がりを見せている作品は存在しますが、そこから外に向けての訴求はまだまだできておらず、身内盛り上がりから脱却できていないと感じます。
これに関しては様々な理由が考えられますが、一番に思うのはボイスドラマに対して金銭的価値を感じていただける土壌が出来上がっていないということです。インターネットの文化としてのボイスドラマは、演じる場を求めた有志が企画を立ち上げて行われるものというのがベースにあり、そこに商業的な空気はほとんどありません。一応、「ドラマCD」という呼び方で大型IPのキャラクターが登場する商業的作品は流通しているのですが、あくまで何かのグッズの特典や楽曲のボーナストラックとして差し込まれているという立ち位置であることがほとんどである印象です。声優やキャラクターを求めてドラマCDを買う層が大半を占めているはずなので、広く「音声ドラマ」というエンタメの現状を考えた時、世間的な注目度はかなり低いと言わざるを得ません。故に、価値を感じていただけるチャンスも少ないということになります。
音声ドラマは、アニメやゲームなどに比べると手軽に作ることができる(……ように見えるだけで実際はそれなりに大変ですが、あくまで相対的な話です)というだけでなく、独自の表現手法で人々を楽しませるコンテンツであると確信しています。ビジュアルがないというのは小説に近いところがありますが、文字情報が無く音声のみというところにも、他の媒体との差別化ができる余地が大いにあり、拙作『グレート・オッド・ワン』はそういったところに着目して制作しました。ラジドリコロシアム出場作『ごうもんセンターむらもとK支店』では優勝を勝ち取り、箱舟壱座のボイスドラマによって一定のムーブメントを作ることができたと自負していますが、それも小さな世界の中での話に過ぎません。ボイスドラマに広く価値を感じていただけるようにするには、もっともっと広報に力を入れなければなりません。『ただ良いものを作っているだけではいけない』……と誰かが言っていましたが、その事実を痛感しました。
今回は、作品制作に時間を追われ、結果として広報活動はいつもに比べて最小限となってしまいました。本当はもっとやりたいことがあったのですが、期限が迫っているため断念しました。宣伝は、作品のクオリティと同じかそれ以上に大切であり、疎かにすべきではないと思います。
今後のことについて
ボイスドラマの厳しい現実は受け止めたものの、今後もボイスドラマの制作は続けていこうと考えています。聴いていただける方に「面白い」と言っていただけるのはやはり嬉しいものですし、箱舟壱座のボイスドラマには、他にない独自性があるという自信は変わりません。関わってくださる方に向けても、活躍の場を持続的に提供していきたい思いがあります。
ただ、それとは別に、箱舟壱座でやりたいこととして新たな切り口での作品制作を考えています。もとより箱舟壱座はボイスドラマ制作サークルではなく、今は結果的にそういったスタイルを取っているに過ぎません(初期は『ビジュアルボイスドラマ』という映像作品を出していました)。「誰かのための、リアルなエンタメ」という理念から外れない限り、制作媒体は問わないと考えています。現在、企画立案の最中ですので、準備が出来次第情報を解禁していきます。
今後とも箱舟壱座をよろしくお願いいたします。