【ネタバレあり感想】朗読劇『あなたの海は何色ですか?』滅びのなかで見出すものとは

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【ネタバレあり感想】朗読劇『あなたの海は何色ですか?』滅びのなかで見出すものとは

劇団VoiceTripさんの朗読劇『あなたの海は何色ですか?』を鑑賞しました。

同劇団の代表えど氏は交流会で知り合った縁で、オーディオドラマとはややフィールドが異なりますが、創作活動に対する考え方が私と近く意気投合したという経緯があります。その方が代表/脚本をされている朗読劇ということで、楽しみに劇場へと向かいました。

オーディオドラマのような繰り返し楽しめるようなものではない「生もの」であるため、あまり配慮する意味もないかなと思い、今回はがっつりネタバレします。今回は再演とのことですが、もしかしたら再々演ということもあるかもしれませんので、気になる方はご注意いただければと思います。

良かったところ

4人のメインキャラクターおよびその演者がどなたも魅力的でした。
特に、我々の価値観では屈強な大男としか思えないイヌマオが可愛い女の子(戦士でもあるようだけど)というギャップは、きっと声だけでも効果的でしょうが、演者のビジュアルが明らかになる朗読会ならではの面白さがあったように思います。男性が女性役をやる舞台は他にも観たことがありますが、だんだん本当に可愛い女の子なんじゃないかって思えてくるのが不思議です。慣れって怖いですね。あるいは演者の力でしょうか。

内容としては、「海って普通黄色じゃないの?」という最序盤のトーマスの台詞から一気に作品の世界観に引き込まれました。違う惑星からやってきて、地球に不時着して、そこが既に滅亡していて……というような特殊な状況はナレーションで説明してしまいがちなところ、登場人物の少ない台詞で展開させ、観客を物語へスムーズに導くのは、観客に楽しんでもらうための作り手の工夫、脚本力に他ならないでしょう。
また、アリスは透明なマスクがあってやっと荒廃した世界で生きているのに、何故それがない執事は平気そうにしているんだ?という鑑賞中の疑問に対しても、その理由が終盤の展開でしっかりと回収されるのが良かったです。全体としては、細かいところを追っている観客が損をしない構成になっています。

演出について、映像を使った演出はリアルイベントならではで非常に楽しめました。もう会うことのできないであろう過去の人物(トーマスの上官とアリスの父親)と会話をするシーンにおいて、会話相手のセリフがタイプライター風のテキストで表示されていたのですが、メインキャラクター4人以外の声が敢えてミュートになっているのは、滅亡して閉じてしまった世界観を演出する大いなる助けとなっており、味わい深い雰囲気を醸し出していました。

気になったところ

私が観賞した夜公演はifルートとのことですが、アフタートークで昼公演(正史)の話を聞いて「なるほど」と思い、そちらの方を鑑賞したかったというのが正直な気持ちです。

というのも、トーマスの接吻でイヌマオが落ち着いて物語が終結に向かうというのが本来の流れだったところ、ifルートではそうではなく、更に執事による接吻で事態が収束するという展開に変わっていたそうですが、この内容は脚本上のトーマスの存在意義を薄めるものとなってしまっています。私が観れなかった正史の場合は、一人生き残った地球人のアリス、重大な正体を隠されているその執事、父親の研究成果を発掘するためのパワーを持つイヌマオ、それを最後に鎮めるトーマス……といった具合に、物語における役割が綺麗に分担されていたはずなのです。これが周回プレイできるノベルゲームならば焦点の当たるキャラクターが違うということで納得感があったでしょうが、生ものである朗読劇となれば話が変わってきます。再演とのことですし、1日2ステやるので複数回観に来てくれるファンのために仕掛けを施したいという意図があったであろうことは理解できますが、私のように前回公演に来ておらず今回もifルートしか観ていない観客も少なからずいらっしゃったようでした。そもそもWキャストで上演する時点で変化を加えることにはひとまず成功しているので、この朗読劇がVoiceTripさん初見である私個人の目線としては、今回のifルートは蛇足と感じてしまいました(夜公演でifルートをやるということはチケット予約の時点で開示されていたものの、上演期間が1日なので時間帯が合わずでした)。

あと、非常に細かいのですが、地球人でないはずのトーマスとイヌマオがドイツ発祥であるフランクフルトのことを知っていたり、日本の諺を引き合いに出していたところは「ん?」と思いました。事前に地球のことをリサーチしていたということなのかもしれないのですが、それなら海の色について知らないのは変だよな……とか(それを言うなら、何で異星人である登場人物たちが同じ言語で会話できてるんだとか色々疑問点は出てきてしまうのですが、そこまでの理屈を朗読劇の尺の中で詰め切るのは難しいだろうな、とも)。あるいは、彼らフランクフルト/当該の諺にあたる異星人独自の文化を我々地球人向けに翻訳している結果なのかな、とか、惑星間での交流が存在する世界観なのかな、とか。そのあたりのリアリティラインがよく分からなくなる瞬間がありました。

最後に

色々書きましたが、何よりも朗読劇のリアルイベントで、2公演合わせてキャパを完全に埋めていらっしゃったのが素晴らしいと思います。
創作活動は好きだからやっている、と言えばそれまでですが、活動を持続可能にするためにはファンからの応援が必要不可欠です。それはオーディオドラマにおいても変わらないので、学ぶところが大いにある劇でございました。

今後も公演を予定しており、規模の拡大も考えていらっしゃるということなので、ご活躍を楽しみにしております。