『グレート・オッド・ワン』とラジオドラマへの想い

箱舟壱座のラジオドラマシリーズ『グレート・オッド・ワン』が、先月完結いたしました。再生していただいた方は、ありがとうございます。様々な試みを作品に仕込んできたシリーズとなりましたが、いかがでしたでしょうか?

この記事では、『グレート・オッド・ワン』完結後の今、作品制作の振り返りと裏話について書いていきます。

なぜ”AUDIO ONLY”なのか?

今までの箱舟壱座では、ビジュアルボイスドラマやオリジナル曲+MV、映像作品を制作してきました。しかし、『グレート・オッド・ワン』は、OP/EDやオーディオスペクトラムの演出はありますが、本編の部分はオーディオオンリーとなっております。これまでと違う方向に舵を切ったということには、それなりの意図がありました。

郷に入っては郷に従え

私の作品に出ていただいている声優の皆様は、俗に【ボイスコ(※ボイスコーポレーターの略。ネットで活動する声優のことを指す慣習的な言葉)】と呼ばれており、ボイスドラマという媒体で作品を発表されていることが多いです。X(旧Twitter)では、定期的にテーマに沿ったボイスドラマを発表し合うという文化も存在しています。

私は『夢見月の終着点』という作品から活動を開始したのですが、その時点では【ボイスコ界隈】を認識しておらず、活動を続けるうちに迷い込んだ形となっています。『.REVIVE[ドットリバイブ]』の時点で【ボイスコ】の方が参加してくれるようになり、先に述べた文化を知っていったわけです。

私はこれといって【ボイスコ界隈】を強く意識しているわけではないのですが、私の周りに【ボイスコ界隈】に身を置いている方が多い以上、まずはそこから地盤を固めていくことが重要であると考えました。ゆえに、箱舟壱座のオーディオオンリー作品を作ることを決めたわけです。

ラジオドラマとボイスドラマの違い

呼び方が違うだけで、同じことを指していると私は認識しています。強いて違いを上げるとするならば、商業のニュアンスが強い言い方がラジオドラマであり、そうでないもの(そうとは限らないもの)がボイスドラマ、なのかもしれません。

今回ラジオドラマという呼称を採用したのは、単純にそちらの方が検索数が多かったためです(Googleトレンド調べ)。

媒体としてのラジオドラマの特徴

視覚情報が無いということについては、小説に近しいものがあります。敢えて情報量を絞ることで、聴き手の想像力が働き、映像にはない表現をすることができる───今回企画するにあたり、そういった特徴に注目して作品制作を行いました。

それを踏まえた上で、次は各Sceneのコンセプトについて簡単に触れておきます。

※ここからの内容は『グレート・オッド・ワン』のネタバレを含みます。

各Sceneのコンセプト

Scene1「とあるアパートの一室」

『グレート・オッド・ワン』を構想する中で最初に思いついたシチュエーションです。

「耳だけで情報を得る」状況って何だ?と考えた時、まず浮かんだのは賃貸住宅における隣人の話し声でした。なんてことはないカップルの乳繰り合いだと思っていたら、奇天烈なやりとりが聞こえてくる。リスナーが音声情報を注意深く処理することを逆手に取り、違和感を植え付けることを目指した作品となります。

エチゼン、カミクラのカップルの怪演はもちろん、コーモトのツッコミっぷりも好評でした。第1話ということでとにかくインパクトを意識したエピソードであり、いただいた感想を拝読した限りでは、その試みはうまくいったのではないかと手ごたえを感じています。

Scene2「ラジオブース」

音声だけのコンテンツといえば、ポピュラーなものにラジオがあります。

このエピソードでは、Scene1の違和感の正体をより具体化すること、そして『グレート・オッド・ワン』が作中世界の様々な【シーン】を切り取る作品であることを示すことが目的となっています。声優陣のお仕事が見事で、そのままラジオとして聴けてしまうようなクオリティに仕上がったのではないでしょうか。

ちなみに、構成作家の名前は「ヤナギダ」(コイズミが一瞬呼んでいます)と言いますが、彼はオクトパス族という設定があります。

Scene3「運送会社のトレーラー」

このエピソードはScene2のラジオを何者かが聴いているところからスタートします。Scene1,2は全く別のロケーションでしたが、実はそれらが地続きになっているのでは?ということを示唆する演出となっています。

ここまでくるとリスナーは、『グレート・オッド・ワン』の世界がどのような状況なのか、その全貌を理解し始める頃だろうと想定していました。

ちなみに、このScene3にトゲっちというキャラクターが登場するのですが、想像以上に人気で驚きました。脚本としても「トゲっちを活かす」話だったというのは声優陣に伝えておりましたが、ここまで印象に残ったのは、トゲっちはもちろん、それを引き立てるアカガミ、クロヤマを担当した声優陣の努力の賜物だと感じます。

Scene4「研究所」

『グレート・オッド・ワン』の世界の核心に迫るエピソードです。

アパート、ラジオブース、運送会社のトレーラーと、それまでは日常的な風景(我々にとっては非日常ですが)を切り取ったエピソードでしたが、そこからガラリと雰囲気が変わり、“SF”ブラックコメディとしての色合いが強くなっています。

このエピソードは声優陣の声質のバランスが絶妙で、かなり個性的な方が4名集まった作品となっています。ラジオドラマ(ボイスドラマ)を制作する方からは、「似た声質の人は区別がつかなくなるからキャスティングがしにくい」という話をよく聞きますが、そういった問題は一切感じることなく制作することができました。

この時点で作中世界の全貌はほぼ判明し、その上でトラブルが発生、じゃあ次の最終話はどうなるんだ?という流れとなります。

Scene5「シェルターの遺物保管庫」

締めのエピソードとなります。満を持して哺乳類由来の種族が登場。Scene4から大きく変わってしまった世界の中で、シイバというキャラクターが彼を慕う少年・サラブに、「生きるとはどういうことか」というテーマを彼なりに語りかけます。

全体的にどこか哀愁が漂う、最終話にしてシリーズの中で異色なエピソードに仕上がりましたが、SFブラック“コメディ”の部分を担保してくれるのが、ラグドルとエリマネだったと思います。そういった意図を声優陣の皆さんもしっかり汲んでくださり、緊張と緩和のコントラストが浮き出たエピソードとなりました。

言うまでもなくエリマネは名前ではなく役職であり、彼はカンガルー族という設定があります。

制作を終えて

学びが多い体制でした。

編集においても新しく覚えたことをたくさんアウトプットしましたが、何よりもラジオドラマという媒体に対する可能性を見出すことができ、今後の活動の幅が広がったように思います。今後さまざまなエンタメを発信する中で、貴重な時間だったことは間違いありません。

余談ですが、『グレート・オッド・ワン』の脚本を書き上げた後、「自分、かなり擦れてきたな」と思いました。Scene5で取り扱ったテーマは、『夢見月の終着点』において、キャラクターたちがたどり着いた結論に近しいものがありますが、今回はより退廃的な印象を受けます。

書き手の変わらない部分と、時を経て少しずつ変わっていった部分、そういったものを客観的に見つめ直すことができるのも、創作の面白いところだと思います。

次回作について

次もラジオドラマの予定です。

『ヴァスカレイド』から『グレート・オッド・ワン』までは約1年の期間が空きましたが、次はだいぶ早く発表できると思います。

箱舟壱座Discordサーバーに存在するデータベース

voyage code:TCM
また次の世界でお会いしましょう。

ラジオドラマ『グレート・オッド・ワン』声優募集要項

同人サークル「箱舟壱座」代表のNoah.revです。

このたび、弊サークルの新作ラジオドラマ『グレート・オッド・ワン』のCV(キャラクターボイス)を務めてくださる声優様を募集いたします。

作品へ参加を希望される皆様は、当ページの各項目を読んだ上で、記事最下部にある「応募フォームこちら」からご応募ください。

作品概要

脚本/演出

Noah.rev

ジャンル

SF/ブラックコメディ

公開について

「箱舟壱座」公式YouTubeチャンネルにて、2024年春より公開開始予定

あらすじ

犯罪組織『レプトゥリオ』に属するならず者・コーモトは、盗掘した<遺物>の一部を密かに持ち帰り、売却益の横領を企んでいた。
そんな中、隣室からカップルの乳繰り合いと思しき音声が聞こえはじめる。苛立つコーモトだったが、隣室のやりとりは次第に奇妙な展開となってゆき……?

(全5話/1話あたり10~15分程度)

募集要項

応募条件

  • 自宅での収録環境を備えている方
  • 責任能力があり、チームでの作品制作に必要なコミュケーションが問題なく取れる方
  • Discordのアカウントをお持ちであり、同サービスを使ったリモート稽古に参加できる方

【リモート稽古について】

  • 演出はNoah.revが担当します。
  • 2023年12月より稽古開始予定です。
  • 実施日・時間帯は各参加者のライフスタイルに合わせて調整いたします。
  • 実施回数の目安は1人あたり2~4回で、1回あたり最大2時間程度となります(各稽古事前のご相談で、途中参加/途中退室も対応可)。

報酬

ささやかな金額にはなりますが、弊企画は有償でのご依頼となります。

  • 各出演者に、担当台詞1文字あたり2円をお支払いします。
  • 文字数が少ない(250文字未満)のキャラクターの場合、最低保証金額の500円をお支払いします。
  • お支払方法は銀行振込を想定しておりますが、他のお支払方法でも対応可です。ご相談ください。

募集人数

5~6名(男女比不定)

募集〆切

11/19 23:59

応募から選考までの流れ

■応募方法

①当記事最下部の「選考台本を見る」より、演じたいキャラクター※を選び、指定された台本の台詞を全て収録してください。

保存形式は以下を指定させていただきます。

拡張子:wav
周波数:48,000hz
ビット数:16it
チャンネル:モノラル

※複数のキャラクターをご志望いただけます。

②収録音声ファイルを以下の命名規則で保存してください。

(活動名)_(キャラ名)_(セリフ通し番号).wav

例)Noah.revが「エチゼン」役を希望し、同キャラクターの選考台本[1]、[2]、[3]それぞれの音声を収録した場合

「Noah.rev_エチゼン_1.wav」
「Noah.rev_エチゼン_2.wav」
「Noah.rev_エチゼン_3.wav」

③収録後、同じく当記事最下部の「応募フォームはこちら」より、必要項目と上記の収録音声を送信してください。

収録音声ファイルはギガファイル便、Dropbox、Google Driveなどのストレージサービスを使用し、有効な共有リンクをご共有ください。

Noah.revが確認後、フォームに入力された連絡先(メールアドレス)宛に受付完了メールを送信させていただきます。※

以上で応募は完了となります。

※zipファイルなどでまとめていただけるとと、確認がスムーズになり助かります。
※応募後、48時間以内に受付完了メールが届かない場合は何らかの不具合や事故の可能性がございます。お手数をおかけしますが、当サイトの「Contact」よりお問い合わせください。

■選考について

①応募〆切の11/19より数日後、選考通過者の皆様に向けて、応募時に入力いただいた連絡先(メールアドレス)宛にご案内を差し上げます。

②選考通過者が多数の場合、Discordを使った2次選考を行います。共演者との台本読みや、演出Noah.revとの面談を実施する予定です。

③選考通過後、改めて条件を提示いたします。条件にご了承いただいた時点で、出演内定となります。

注意事項/その他共有事項

共演者について

箱舟壱座の過去作品に出演した皆様に向けて、今回の募集に先行してDiscordサーバー内募集およびオーディションを行っており、その結果、以下の皆様の出演が事前に決定しております。(五十音順/敬称略)

  • おーたむ
  • 小湊ミチル
  • 田中
  • てん
  • 穂月
  • Mira
  • ミンク
  • mochimiyu

箱舟壱座について

同人サークル「箱舟壱座」は、Noah.revのみが所属する個人サークルであり、事前に出演が決定している前述の皆様や、今回の募集で新たに作品制作に参加することになる皆様は、弊サークルの所属という扱いではございません。

今回の募集での出演内定者は箱舟壱座のDiscordサーバーにご参加いただきますが、それによって参加作品に関連すること以外の義務が生じることはありません。

選考通過の連絡について

選考を通過しなかった理由についてお問い合わせいただいても、回答することはできません。ご承知のほどよろしくお願いいたします。

出演者の参加辞退について

繰り返しの無断遅刻・欠席、体制中に音信不通になる等の問題行動が認められた場合、演出判断で参加を辞退していただく場合がございます。

その他、何らかの理由で欠員が生じた場合、改めてCV募集をさせていただきます。

お問い合わせについて

『グレート・オッド・ワン』選考に関するお問い合わせは、当サイトの「Contact」より承ります。

選考台本を見る応募フォームはこちら

ラジオドラマ『グレート・オッド・ワン』声優募集選考台本

Scene1~5までの全5回分の台本が存在し、それぞれ舞台および登場キャラクターが異なります。

Scene1に登場するキャラクター

舞台:犯罪組織「レプトゥリオ」の構成員・コーモト(CV:おーたむ)のアパート。その隣室から、エチゼンとその恋人・カミクラ(CV:小湊ミチル)の乳繰り合う声が聞こえてくる。


エチゼン

コーモトのお隣さん。カミクラの恋人。
募集性別:男性
台詞文字数:844字

【選考台本】

[1]
ごめんね、困らせちゃって。好きな理由なんて答える必要ないよ。僕はカミクラさんがそばに居てくれるだけで幸せだから。それでよくない?

[2]
「脚!脚を見せろ!左から285番目の脚を絡ませろ~!!」

[3]
「か、カミクラさん!ごめん!謝るから!やっぱ別れないです!カミクラさんのことスーパー好きです!一生愛します!結婚!妻!伴侶!ごめんなさいマジでごめんなさい!」


ボス

コーモトの上司にあたる存在。
募集性別:不問
台詞文字数:144字

【選考台本】

[1]
「コーモト。『犯罪組織』の構成員だという自覚が足りんな。我々『レプトゥリオ』はいつ何時も隙を見せてはならん。盗掘の日に万全な状態を維持できていなくてはどうする。我々は『犯罪組織』だ。いいな?」


Scene2に登場するキャラクター

舞台:お笑いコンビ「ヨムロッグ」がラジオ収録をしているブース。いつものようにオープニングトークからスタートするのだが……?


トオノ

お笑いコンビ「ヨムロッグ」のボケ担当。
募集性別:男性
台詞文字数:1047字

【選考台本】

[1]
「まぁまぁ、芸人でも最低限のマナーがあるでしょうよ。視聴者を不愉快にさせないように、みたいなね?」

[2]
(コイズミから「お前は『ヨムロッグ』のやらかし担当だ」と言われ、)
「なんだよ、やらかし担当って。ボケ担当だよ俺は。頼むぞリスナー……。」

[3]
(コイズミと些細なことで口論になり、)
「んだとテメーこの野郎!?やってみろやこの野郎!!」


コイズミ

お笑いコンビ「ヨムロッグ」のツッコミ担当。
募集性別:男性
台詞文字数:2637字

【選考台本】

[1]
「養成所時代から若くして大ブレイクを果たし、天狗になっているのでは?と囁かれるお笑いコンビ『ヨムロッグ』。このコーナーではそんな我々を戒めるために、リスナーがTV番組やプライベートで目撃した我々『ヨムロッグ』のやらかしを送っていただきます。」

[2]
「とうとうここまで来たかって感じですよ。お前のポンコツが電波に乗って、リスナーに感染しはじめてるんですよ。」

[3]
(トオノと些細なことで口論になり、)
「なんだよテメー、コラ?お前あとで殺すからな?殺してやっからなマジで?」


Scene3に登場するキャラクター

舞台:とある物流業者のトレーラー。運転手のアカガミ、その後輩のトゲっち(CV:穂月)、新人のクロヤマ(CV:mochimiyu)が乗車している。


アカガミ

トレーラーの運転手。
募集性別:女性
台詞文字数:1251字

【選考台本】

[1]
「クロヤマさん、よろしくね。私は物流部第二課課長のアカガミだ。で、こちらは後輩のトゲっち。」

[2]
「やっぱりさ、種族によって階級があるんだよ。我々のような底辺はさ……身分を弁えないと。」

[3]
「う、うん。クロヤマさんさ、しばらくトゲっちと話しててくれない?運転に集中しないと事故りそうで怖いからさ……。」


Scene4に登場するキャラクター

舞台:謎の研究所。天才研究員のケンザキ博士(CV:てん)が、助手である汎用型AIのユニたん(正式名称「ハンドユニット」、CV:田中)と共に、<遺物>に関する研究をしている。


ソデイ

ケンザキの同僚の研究員。
募集性別:女性
台詞文字数:213字

【選考台本】

[1]
「ケンザキ博士。保存機構の解析が完了、準備が整いました。」

[2]
(脱走した被検体に目をやり、)
「居住区画から勝手に出て所内を歩き回るんですよ。どうやって脱走してるのかは謎なのですが、目を離してる隙に……。」


マサダ

研究被験体。ソデイが面倒を見ている。
募集性別:不問
台詞文字数:254字

【選考台本】

[1]
「あ~、お腹すいた~。お昼ご飯まだァ~?」

[2]
([1]の雰囲気からがらりと雰囲気が変わり、)
「これは知能差別に対するクーデターだ。汎用型AIが創った憎きイデオロギーは、我々が完膚なきまでに破壊する。」


Scene5に登場するキャラクター

舞台:洞窟に作られたシェルター。自称小説家・シイバと、彼に師事する少年・サラブが、シェルター内で<興味深いもの>を見つける。


シイバ

自称小説家。
募集性別:不問
台詞文字数:1573字

【選考台本】

[1]
「外の世界は未だに紛争が続いているからな。君の両親もまだ見つかっていないんだろう?」

[2]
「ちょいちょいちょいちょいちょいちょい!ラグドルお前!もうあっちいけ!」

[3]
「私達それぞれの思想や行動も、何か大きな力が働いて決められているのだとしたら…… 私達のこの意識は、観測者に過ぎない。観測者にできることは、この身で体験したことに意味を付けていくことだけさ。」


サラブ

シイバに師事する少年。
募集性別:女性
台詞文字数:883字

【選考台本】

[1]
(シイバから名作とされる小説を貸してやると言われ、)
「いいんですか?ありがとうございます!いつかシイバ先生の小説も読ませてくださいね。」

[2]
「僕も、たまに考えるんです。どうして自分は今こうして生きてるんだろう?どうして生命体は存在するんだろう?って。それは、この地球に必要だからだとすれば、『惑星の意志』によって、今ここに僕たち生命体は存在させられている。そして、僕たちがこれからどうなるかは、やはり『惑星の意志』によって決められていく。」

[3]
「僕、もっと勉強したいです。立派な大人になって、外の世界に行って、もし紛争が終わったら……両親に会って、成長した姿を見せたい。もしかしたら、そのために先生と出会ったのかも。」


ラグドル

シイバの旧友。
募集性別:不問
台詞文字数:468字

【選考台本】

[1]
(「もうあっちいけ!」とシイバから言われて、)
「え~?もっとお喋りしましょーよー。大学時代からの仲なんすから。あと金返してください。」

[2]
(サラブに向かって、)
「シイバさんが地獄の外回りから戻ってきたら、また一緒に話してやってね。ちょっとだらしないところあるけど、君と知り合ってから、シイバさん凄く元気になったんだよ。それじゃ。」


エリマネ

シェルターを管理するエリアマネージャー。
募集性別:不問
台詞文字数:174字

【選考台本】

[1]
「シイバ貴様!外界探索のシフトを8回もすっぽかしやがって!成熟者の外回りはシェルター内条例の義務だぞこのクソイヌコラァ!!」


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リモート稽古で演出を付ける際に意識していること

Noah.revの企画では、通話アプリ・Discordを使用してリモート稽古を行っています。私は演出家として稽古に参加し、キャストさんのお芝居をリアルタイムでディレクションさせていただいております。

この記事では、私がリモート稽古で演出を付ける際に意識していることのうち、特に重要だと感じている項目を3つピックアップしてご紹介します。

演出家とは?

この記事における演出家とは、作品のクオリティに関する責任を負う立場のことです。キャストおよび各方面のスタッフに対して仕上がりの方向性を示すのが役目であり、作品制作の実質的なリーダーです。主に舞台作品の現場で使われている用語であり、映画における監督と同じような立場と考えてよいと思います。

以上を踏まえ、私が稽古で意識していることをご紹介します。

※私は脚本と演出を兼ねているケースがほとんどなので、演出を付ける際の前提となる脚本の読み解き方については、この記事では割愛します。

①演出プランを事前に公表しない

キャストに対して「こういう感じで演技して欲しいです」というようなこと(=演出プラン)をあらかじめ伝えず、まっさらな状態で稽古に臨むようにしています。

その理由は大きく分けて2つ。

キャストの自由な発想を潰さないようにするため

私はキャストと一緒に最適解を導き出すというスタンスで演出を付けています。もちろん自分の脳内にある程度の演出プランは用意していますが、それだけではなく、演出家では思いつかないキャストならではのアイディアをうまく取り入れることで、キャラクターがよりキャラクターとして生きられると考えています。それが稽古の面白いところの一つです。

事前にお芝居の方向性を伝えてしまうと、キャストは自分の役に対して「そういうものである」という先入観を持ちながら脚本を読んでしまいます。真面目に取り組んでくれるキャストほど演出家の言葉を注意深く聞くものであり、それが徒となって可能性を狭めてしまうのは勿体ないことです。

もちろん、作品全体が向かうべき方向を考えた時、キャストのやりたいことが一人歩きしてしまう状態は避けねばなりません。その軌道修正は演出家の仕事です。

ほとんどの場合「コレジャナイ」になるため

キャストに事前にイメージを伝えても、演出家が思い描いてたようなお芝居にならないことがほとんどです。言葉の解釈には齟齬が生じるものだからです。リモート稽古でお互いの顔が見えない状態であれば尚更です。

例えば、「優しいギャルっぽい感じでお芝居してください」と事前に伝えたとします。しかし、その時点で演出家が思い描く優しいギャルと、キャストが思い描くそれは、それぞれ送ってきた人生が違う以上、まるで異なるイメージが形成されているはずです。労いの声をかけてあげるような優しさもあれば、敢えて厳しいことを言う優しさもあるし、何も言わずそっとしておく優しさだってあります。ギャルに対する認識も人それぞれです。抽象的な指示は大抵の場合うまくいきません。

「では、もっと具体的に指示すればいいのでは?」と思いきや、事前の指示が具体的になればなるほど、前述の通りキャストの自由な発想を潰すことになってしまいます。そもそも、優しいギャルで読まないほうが面白いシーンに仕上がるかもしれないですからね。

そうであれば、解釈はキャストの読み込みに委ね、稽古の中で演出家とすり合わせをしていく方が結果的に効率が良いですし、斬新なアイディアが生まれやすくなります。どのみち解釈に齟齬が生じるならば、逆にそれを活かす可能性を残した状態で稽古に臨むのが一番良いという考え方です。

②キャストのやりたいことに付き合いすぎない

いやしくも表現者であれば「少しでも爪痕を残したい」と思うものです。爪痕を残すというのは個性の爆発と言い換えてもいいでしょう。『声優さんを選考する際に意識していること』でも書きましたが、私自身もキャストの個性は大事にしています。ですが、敢えてキャストの個性を抑える判断をせねばならない時があります。

シーンにはそのシーンの主役というものが必ず存在します。特定のキャラクターにスポットが当てられている場合、その他のキャラクターは引き立て役に徹するべきであり、引き立て役が悪目立ちすることは避けねばなりません。ですが、キャストの役割がキャラクターとして生きることである以上、そのシーンにおける自らの立ち位置を見失ってしまうことがあります。そんな時こそ、シーンおよび作品全体を俯瞰して見られる演出家の出番です。

個性を抑える指示というのは、される側はもちろん、する側にとってもストレスになり得ます。だからといって、キャストのやりたいことを全て肯定するのであれば、そもそも演出家は必要ないのです。キャストの個性を活かすところは活かし、抑えるところは抑える、そんなメリハリが作品をより良いものにしてくれます。そのためには、キャストと演出家の信頼関係が必要不可欠です。お互いの顔が見えない分、言葉選びや伝えるタイミングにはいつも以上に注意する必要があります。

③誰よりも作品に対し熱意を持ち、関係者をワクワクさせる

見出しの内容について説明する前に、私が舞台演劇に関わっていた時代、知り合いの俳優から聞いた話を紹介します。

彼はその時、演出家がキャストを怒鳴りつける稽古場に参加していました。彼はその演出家から、演技指導の枠を超えて、プライドをズタズタにするようなことを言われていたそうです。特定のキャストだけではなく全員に対してそうしていたようなので、敢えてそういうスタイルを心がけている演出家なのだと思います。彼は「もうあの稽古場に行きたくないんだよね」と真情を漏らしていました。

演出にもそれぞれのやり方があるので、私はその演出家を否定をするつもりはありません。「厳しくしてもらったからこそ、役者としてステップアップできた」という感想を抱く参加者もいたようです。ですが、私はその話を聞いた時、「自分が演出家なら、そういうやり方はしないな」と思いました。

そもそも我々が目的とするのは、作品を通して観客をワクワクさせることです。では、関係者同士がギスギスした状態で作られた作品が、観客を心からワクワクさせられると思いますか?私はそうは思いません。

一方で、作品制作は楽しいことばかりではなく、むしろ泥臭い部分が大半を占めているのも事実です。一度でも制作の現場に関わってみれば、それは嫌でも分かることです。やりたいことをやるためには、やりたくないことをたくさんやらなければなりません。我々のようなインターネット発の企画は、孤独な時間も多くなります。だからこそ、実質的なリーダーである演出家が、関係者が楽しめるような工夫を率先して行うべきだと考えています。

Noah.revの企画で行ってきたワクワクの具体例は以下の通りです。

  • 初稽古のアイスブレイクで『ウミガメのスープ』をプレイする
  • 体制参加者がやっている配信をみんなで観に行く
  • 体制参加者用のDiscordサーバーにオリジナルの絵文字(登場キャラクターの顔が使えるようになる)を実装する
  • 最終話の脚本の内容を、最終話に出るキャスト以外には敢えて公開しない(プレミア公開で初めて結末が分かるようにする)
  • 情報解禁日には全体に向けて事前連絡をして盛り上げる
  • 専用Twitterコミュニティを作って関係者同士でクローズドな交流をする

etc…

『.REVIVE[ドットリバイブ]』の体制参加者向けDiscordサーバーで使えるオリジナル絵文字

不思議なもので、私がワクワクするような仕掛けをすると、関係者も便乗して色々考えてくれるようになります。やっぱりみんなエンターテイナーなんですよね。

業務的に済ませればいいような連絡でもワクワク感は大事

この記事で言いたいこと

演出家はリーダーであるが、キャストとは対等である、というのが私の考えです。リーダーとフォロワー、どちらも欠けてはならない存在であり、互いにリスペクトし合ってこそ良い体制が成立します。

演出家がどのように振舞うかで、作品のクオリティおよび現場の雰囲気の良し悪しは大きく左右されます。打ち合わせや稽古場ではもちろんのこと、普段のSNS運用でも、ネガティブなことを極力発信しないように心がけています。関係者が不安になってしまうような状態で、本当に良いものは作れないと考えているからです。

リーダーだから尊敬されるのではなく、尊敬されるからリーダーになれるということを肝に銘じつつ、今後も演出家として作品制作に関わっていきます。

『ヴァスカレイド』のコンセプトや世界観について

箱舟壱座のキャラクター音楽プロジェクト『ヴァスカレイド』のMusic VideoをYouTubeで公開しました。

Noah.revのビジュアルボイスドラマ作品『夢見月の終着点』, 『ゴースト・ガールズ・パーティ!』, 『.REVIVE[ドットリバイブ]』のキャラクター達が一堂に会するクロスオーバー企画であり、サークル旗揚げ作品であると同時に”過去作品と箱舟壱座を繋ぐ”役割を担わせています。

この記事では、「『ヴァスカレイド』ってどういう意味なのか?」「なぜラップなのか?」等、企画そのもののコンセプトに焦点を絞った内容を書いていきます。

『ヴァスカレイド』の意味

ロゴデザイン: mochimiyu

以下の単語を組み合わせた造語です。

Virtual(ヴァーチャル)
Masquerade(マスカレード / 仮面舞踏会)
Kaleidoscope(カレイドスコープ / 万華鏡)
→”Vaskaleido(ヴァスカレイド)

我々が発表してきた作品群はインターネット(=バーチャル)で知り合った仲間達で作り上げてきたものであること、役という仮面を被ったお祭り作品(=マスカレード)であること、キャラクター、世界観および役者が万華鏡(=カレイドスコープ)のように印象を変えること、という想いをミックスさせて作ったタイトルです。

なぜラップなのか

”ラップはキャラクターとの親和性が高い”という気づきを得たことが一番大きいと思います。

ラップは基本的に”自分のことを歌う音楽”です。ラップを歌唱方法としてではなくHIPHOPカルチャーとして捉えた場合は特にそうなのですが、ポップス(=大衆音楽)と比べると『俺は□□生まれ、育ちは××、生みの親の名前は〇〇、俺を狂わせたヤツは△△』……といった具合に、自分に関する具体的な情報をリリックにする傾向があります。言うなればビートに乗せた自己紹介のようなものであり、取りも直さず、ラッパー本人の生き様がそのまま楽曲の恰好よさに繋がるのがラップの特徴の一つだと言えます。

その前提に立って考えると、”ラップはキャラクターの魅力をダイレクトに伝えることができる音楽表現”と解釈できます。既存のキャラクター音楽プロジェクトでラップを取り扱っている『ヒプノシスマイク』は一大コンテンツとして支持を得ていますが、その理由の一つはこういったところにあるのかもしれません。

それに加え、もとより私自身がラップをよく聴いているという点も大いに手伝いました。ミュージカルなんかも同様にキャラクターと好相性ですが、恥ずかしながらその方面についてはあまりにも引き出しが無く、初の音楽制作となる今回、自分にとって馴染み深いジャンルから攻めるのが妥当であるという判断をしました。

世界観について

『終着点』『ゴガパ』『ドットリバイブ』3つの世界に繋がりはないため、『ヴァスカレイド』では”本来交わるはずがないキャラクター達が同じ作品に存在する”というあり得ないことが起こっています。
これに対し私は、以下の2つの理屈を付けています。

①『ヴァスカレイド』のキャラクター達は、召喚者(=キャスト)達による忠実なシミュレートである

私は任天堂の『スマブラ』シリーズが好きなのですが、『スマブラ』シリーズに参戦するキャラクター達は、キャラクター本人ではなく、”そのキャラクターを模したフィギュアに命が宿ったもの”であり、そのおかげで大規模なクロスオーバーが実現しているという理由付けがされています。他のクロスオーバー作品でも、本来交わらないはずの世界が交わる理由が設定されていることが多く、そのあたりを参考にしながら構想を練りました。

“我々が暮らす世界とは違う世界の観測結果を作家が記録に残し、演者はその記録を元に、自分自身を触媒としてその世界の住人を再現する”……

作品作りという行為は、もとよりそういうことなのではないか?という結論に至ったため、そのまま設定として採用することにしました。

『終着点』のキャラクターは、召喚者(=キャスト)のイメージが色濃く投影され、在り方が変容している

②『ヴァスカレイド』は、”箱舟”の上で起きている出来事である

Twitterで公開した『ヴァスカレイド』の予告映像では、”箱舟”の乗組員であるとある女性が、これまでの旅を振り返り、次の目的地に向けた想いを語っています。

これまでの作品が”箱舟が旅を通して観測した世界での出来事”だとすれば、『ヴァスカレイド』は”箱舟の上で起きている出来事”です。『終着点』のようなメタフィクション的な要素があるというわけです。

企画を通しての感想

これまで以上に初めてだらけの企画で不安もありましたが、その分勉強になることがたくさんありました。

今回、CubaseというDAWを導入し、MIXとマスタリングを私が担当したのですが、その中で得た知識はボイスドラマ作品でも有用なものが多かったです。そのあたりの情報共有も、いずれ記事にしたいと思っています。

素晴らしいキャストとスタッフに恵まれた箱舟壱座の第壱回作品『ヴァスカレイド』は、YouTubeにて公開中です。まだ視聴していない方はぜひ!

声優さんを選考する際に意識していること

Noah.revの企画(ビジュアルボイスドラマ等)では、声優さんを募集する機会があります。

募集はインターネットを通じて行っていますが、今回は私なりの選考基準について書いていきます。

何を重要視するかは企画者によって差異があるので、あくまで「Noah.revはこう考えている」という理解のもとで読み進めてくだされば幸いです。

重要視するポイント

優先度が高い順に3つご紹介します。

①人柄

最も注意深く見ているポイントです。

SNSを運用されている方ならばまず最初にチェックし、私の企画と親和性がある方かどうかを判断します。その他、人柄を窺い知れる情報はなるべく取りに行きます。

私の企画では、Discordという通話アプリを使用し、リアルタイムでの打ち合わせ及び演出を付けさせていただいているため、声優さんと密なコミュニケーションをとります。そのため、和を乱すような言動をとりがちだったり、報連相が不十分な方を体制に入れてしまうと、作品作りとは直接関係のない悩みごとに時間を取られてしまいます。世に少しでも良いものを出すためにはなるべく避けたい部分です。

特定の誰かや集団に対する憎悪、慢性的な心身の不調を匂わせる書き込みなど、ネガティブな情報が目立つ場合はそれだけで採用を躊躇います。お芝居の技術以前に、作品を作り上げる仲間として、最後まで一緒に走り切れるかどうか不安になるからです。

②実績

①の次に実績を見ます。

ここで言う実績とは、ボイスサンプルや過去の出演作品に限らず、これまでの活動内容を総合的に指します。

実績を見る上で意識していることは、その人にしか出せない個性が見えてくるかどうか。

ボイスサンプルであれば、例えば「こういう役なら誰にも負けん!」という気概を示されているものが1つでもあると大変魅力を感じます。

過去の出演作品の場合、代表作として掲げられている役があると、その人ならではの強みが分かりやすい上に、表現者としての誇りを感じられるので「是非一緒に!」となりやすいです。

声優以外の活動をされている場合はそれもチェックします。配信者であれば配信を観に行きますし、ラジオをされているならラジオを、歌であれば歌を、また声とは無関係の活動であってもなるべくチェックしています。

私はキャラクターを重視して作品を作るので、とりわけ個性に惹かれるというのは大いにあります。

③役との親和性

意外かもしれませんが、役との親和性について考えるのは最後です。裏を返せば、それぐらい①と②を重視しています。

ありがたいことに毎回たくさんの応募が来るため、「是非ご一緒したいけど、役の関係で今回はすみません!」ということはよくあります。心苦しいですが、こればかりは縁としか言いようがありません。

ですが、ここまで来た方々のことは大抵強く印象に残っています。縁があれば、いずれご一緒することになると信じています。

この選考基準のデメリット

デメリットというよりも私自身の課題なのですが、ともすれば「よく知っている人を選考しがち」になります。つまり、安牌を切り続けることで新しい風が入りづらくなるということです。

表現者として活動を継続していくならば、未知の領域に臆することなく、変化と成長を繰り返す必要があります。これは肝に銘じるべきことだと認識しており、対策を考えています。

この記事で言いたいこと

「技術や実績も大事だが、それ以上に人間性を磨くべし」という点に収束します。

経験が浅かったり技術が粗削りだったとしても、それを補って余りあるほど人としての魅力があれば人が集まってきます。すると経験を積むチャンスが増えるので自ずと実力がつき、個性が確立されていき、人としても表現者としても信頼されるようになります。

素敵な縁にはいつ廻り合えるか分かりません。どんな分野で活動するにしても、関わる人に対してリスペクトを持ち、自己管理を徹底するに越したことはありません。

このような記事を世に出した手前、これから関わってくださる皆さんに示しがつくように、私も精進していきます。